ここでは未発表の小作品を紹介しています。
小さな小さなお話です。
──おはなし──
2013年・後半のおはなし 「ともだち大好き」
今年から、幼稚園に通い初めたみっちゃんは、とても内気な女の子でした。
今日は、白い画用紙いっぱいに、大好きな動物の絵をかく日です。
みっちゃんのまわりのお友だちは、次から次に仕上げていきます。先生が出来上がった絵をかべにはりつけていきます。
でも、みっちゃんは、なかなか、かくことができません。
画用紙の白い色を見ていると、みっちゃんは、画用紙の色と同じ自分の家を思い出し、ママがこいしくなってきたのです。
今ごろ、ママは何をしているのかなぁ〜
みっちゃんは気になって、とうとう今日は絵をかかずに家に帰りました。
みっちゃんは家に帰って、ママに会えたのになんだかちっともうれしくありませんでした。
みっちゃんは、自分一人だけ、画用紙に絵をかかないで帰ってきたことがとても気になっていたのです。
しばらくしてママがみっちゃんにお使いをたのみました。
みっちゃんは、ママからお代金をあずかって、今夜の夕食に使うタマネギとジャガイモを買いに出かけました。
お店屋さんは、みっちやんの幼稚園の前です。
いつもの道です。みっちゃんは迷うことなくお店屋さんにつきました。
お店屋さんについて、タマネギとジャガイモを買おうとしたときです。
幼稚園の方から、楽しそうな笑い声が聞こえてきました。
今ごろ、だれ？もう幼稚園には、だぁれもいないはずです。
みっちゃんは気になって、幼稚園へ行ってみました。
声がするのは、みっちゃんのクラスからです。
みっちゃんは、おそるおそるのぞいてみました。
すると、あらふしぎ。
お友だちが、かいた動物の絵が、画用紙からとび出して、みんな楽しそうにおどっているではありませんか。
みっちゃんも、楽しくなって、いつの間にかいっしょになっておどっていました。
ゆうくんのかいた犬が言いました。
「みっちゃんみっちゃん、もう一人お友だちが足りないよ！早くかいてよ」
そうでした。みっちゃんの画用紙はまだ白いままでした。
みっちゃんは、急いでかきました。
いつもいっしょにねている、ライオンのぬいぐるみの絵です。画用紙いっぱいに大きな大きなライオンをかきました。
ライオンも画用紙からとび出しました。
みんなは歌を歌いました。
♪友だちって いいな〜
♪友だちって あったかいな
♪友だち大好き、大好き友だち
遠くでみっちゃんを呼ぶママの声がしました。
あっ、すっかりわすれていました。みっちゃんはお使いのと中でした。
次の日、幼稚園では大さわぎ！
「みっちゃん、いつお絵かきしたの？」
「うふふ、ないしょ！」
おしまい
