──おはなし──

ここでは未発表の小作品を紹介しています。
小さな小さなお話です。

「ゆきだるまくんのひみつ」販売期間終了!
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お母さんギツネは、この秋生まれたばかりの子どもをつれて、初めて外へ出ました。

「さあ、ぼうや、今日は母さんといっしょに木の実を拾いに行きましょう。」
「うん」

子ギツネはおおよろこびです。

家から外へ出ると、風が冷たく感じました。

「あっ、いたい。おかあさん、風さんがボクのほっぺをたたいたよ。」
「ふふふ、それはちがうよ。
 風さんはね、私たちにもうすぐ寒い冬が来るよって、みんなに知らせてくれているんだよ。」

「でも、ボク、いたかったよ。」
「風さんはとても元気がいいからね。小さなぼうやにはいたく感じたかもしれないね。」

「ボク、こんど風さんにあったら、大きな声で“こんにちわ”って言うよ。」

キツネの親子は大きなどんぐりの木の下にやってきました。
大きなカゴいっぱいになるまで、どんぐり拾いです。

するとかたい落ち葉が子ギツネの指にあたりました。

「あっ、いたい。おかあさん、落ち葉がボクの指をつついたよ。」
「ふふふ、それはちがうよ。
 落ち葉の下には太い木の根っこがかくれんぼをしているからね、
 落ち葉はないしょでぼうやに教えてくれたんだよ」

「でも、ボク、いたかったよ。」
「落ち葉はかたくなってるからね。小さなぼうやにはいたく感じたかもしれないね。」

「ボク、こんど落ち葉をさわるときは、大きな声で“こんにちわ”って言うよ。」

キツネの親子はたくさんどんぐりを拾ったので、のどがかわきました。
お母さんギツネは、子どもといっしよに小川へ行きました。

「のどがカラカラになったね。あの小川で一休みしましょう。」

キツネの親子は小川に手を入れました。

「あっ、いたい。おかあさん、小川の水がボクの手をつねったよ。」
「ふふふ、それはちがうよ。
 小川はね、暑いお日様の光からお魚さんたちを守ってくれているんだよ。」

「でも、ボク、いたかったよ。」
「小川の水は冷たくなっているからね、小さなぼうやにはいたく感じたかもしれないね。
 ほら、お水を飲んでごらんよ。」

子ギツネはごくんと、小川の水を飲みました。

「うわぁ、おいしい、小川さんどうもありがとう。」

「ぼうや、きちんとお礼が言えたね。ふふふ。」

キツネの親子はまた、木の実を拾いはじめました。
                                                            おしまい


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2012年・前半のおはなし                 「キツネの親子」