ここでは未発表の小作品を紹介しています。
小さな小さなお話です。

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──おはなし──

2009年・後半のおはなし                     「どこにいるの」

なかよし5人組。いつもいっしょ。どんなときもいっしょ。
今日もなかよく、おでかけしました。

でも、今日はいつもとちがって、なかよし5人組はすっかりおそくなってしまいました。
いつもは日がくれないうちに、とうげをこえて家に帰るのですが、外はまっ暗です。

「お前たち、すっかりおそくなってしまったね。夜道はこわいお化けが出るかもしれない。
今夜はとまった方がいいんじゃないかい?」

とちゅうで立ち寄った店のおばさんが、やさしく声をかけてくれたのも聞かないで、なかよし5人組は
暗い夜道を帰ることにしました。

とうげの道は、とちゅうからとてもせまい道になっているので、5人ならんで歩くことはできません。
しかたがないのでなかよし5人組は、よこ一列からたて一列にならんで帰ります。

いつもの道だもの、暗くたってへっちゃらさ! だって一本道だもの、だいじょうぶ!
なかよし5人組は自分にそう言い聞かせて、店を出ました。

しばらくすると、とうげにさしかかりました。ふり向くと、さっきまでいた店の灯りはくらやみの中に消えていました。
なかよし5人組は、5人がはなれてしまわないように、荷物のひもの一本をほどいてつなぐことにしました。

まるで電車ごっこです。
なかよし5人組は楽しくなって、歌を歌いながらとうげの道を歩きました。

風が吹いたって、へっちゃら。
木がゆれていたって、へっちゃら。
動物の声だって、へっちゃら。

なかよし5人組は自分たちの町までたどりつきました。

「なーんだ。恐くなかったね」
一番前の一子さんが後ろを向きました。

「うん。そうだね」
2番目の二子さんが後ろ向きました。

「うん。そうだね」
3番目の三子さんが後ろ向きました。

「うん。そうだね」
4番目の四子さんが後ろ向きました。

すると、5番目の五子さんはどこにもいなくて、代わりに木がくくりつけられていたのでした。

「ギャー」
4人は大あわてで、自分の家にとんで帰りました。

あれから何年もたちますが、どんなに探しても五子さんは見つかりませんでした。

そして今も、ふり向いたときにあったあの木が、あの場所にあるのです。
                                                     おしまい