ここでは未発表の小作品を紹介しています。
小さな小さなお話です。
──おはなし──
2008年・後半のおはなし 「いそがしい夜」
あしたは、みんなが楽しみにしている「クリスマス」です。
北風さん一家は大いそがしです。
どうしてかって?
みんなと同じよ。クリスマスのじゅんびで、とってもいそがしくなるの。
「リーンリーン」
サンタさんから電話です。あしたの朝一番に子どもたちにプレゼントをとどけたいので、町じゅうを真っ白にしてほしい
と注文がきました。
北風さん一家は、一年かけて作った雪を大きなふくろにつめます。
そしてお父さん風と、お母さん風のせなかに、子どもたちを乗せて、夜の間に町じゅうにばらまきます。
このばらまきかげんが、とってもむずかしいのです。
まんべんなく、どの町にもきれいに雪をふらせないといけません。
お父さん風が少しでもバランスをくずすと、子どもちは大きくゆれて、お父さん風のせなかから落ちてしまいます。
すると雪をもったまま、落ちてしまうものですから、町がふぶきになってしまいます。
これではせっかくのクリスマスもだいなしです。
あらあら、お母さん風が少し疲れてきたのでしょうか、スピードが落ちてきました。
お母さん風さん、早くしないと夜が明けてしまいます。
町ではあちらこちらに灯りがともり、げんかんにはクリスマスのかざりが、とてもきれいにかざられています。
町のみんなが楽しみにしているホワイトクリスマスです。
みんなが楽しいと、北風さん一家も楽しくなります。
あと、もう少しです。
オーロラが道あんないをしてくれました。
北風さん一家のおかげで、町は真っ白になりました。
朝一番の鳥の声がしました。朝です。
「メリー・クリスマス!」
おしまい