2005年・前半のおはなし                 「恐怖の三重奏」

世の中に怖い話はたくさんあります。でも本当に怖いのはいったい何でしょうか・・・
私は、最近怖さの度合というものは、どれもさほど変わらないのでは・・・と感じています。
今回お届けする話は、私の知り合いが体験した恐怖の三重奏をお話したいと思います。

今日の主人公である彼女は、当時大学生でした。私はまだ高校生でした。
彼女とはバイト先のケーキ屋さんで知り合いました。
高校生だった私は、長く勤めていた彼女から仕事のこと、勉強のことなど色々と教えてもらっていました。
私のバイトは夕方6時〜9時。彼女は大学生で20歳ということもあって、私より1時間バイトの時間が遅く、いつも私の方が先に帰っていました。
ある日、彼女が、交通事故に遭いバイトをしばらく休むことになったのです。
私は気になり、彼女が入院している病院を訪れたのです。
そこで、彼女が恐怖の夜を過ごしたことを私に語ってくれたのです。


いつものようにバイトを終え、帰路を急いでいた彼女。この日はひどい雨で、歩いて通勤したのでした。
誰かの視線を感じた彼女は振り向きました。
そこには、真っ赤に返り血を浴びた男が刃物を持って立っていたのです。
男はゆっくりと近づいてきました。彼女は傘を放り投げ、慌てて走りました。
確か、あの柳の街路樹がある通りに交番があったはず・・・彼女は交番へ飛び込みました。
幸い交番にはお巡りさんが居てくれました。
交番に飛び込まれ、ヤバイと感じたのか怪しいあの男は、姿を消していました。
全身ずぶ濡れだった彼女に、バスタオルを貸してくれたり、温かいお茶を入れてくれたりしていたお巡りさん。
突然、お巡りさんが玄関の方を見て
「ワーッ」
と叫んだのです。彼女も玄関の方を見ると、なんと玄関から見える柳の木の下に彼女がそこに立っていたのです。
私がもう一人?
お巡りさんと彼女は、怖さのあまりそのまま動けなくなっていました。これが金縛りというものか・・・と彼女は思ったのでした。
もう一人の彼女は、全身ずぶ濡れで無言のまま近づいてきたのです。そしてそのまま彼女とお巡りさんの体をすり抜け消えていったのです。
彼女はお巡りさんが何か言っていたが、聞く耳も持たず交番を飛び出したのでした。
夢中で前もよく見ないで走っていた彼女。交差点の信号にも気付かず、赤信号なのに走り続けてしまったのです。
“ドーン”という鈍い音とともに、彼女の体は数メートル宙を舞、飛ばされ。柳の木にぶつかり落下したのでした。
そして、飛ばされた場所が、さっきお巡りさんと一緒に恐怖を味わった、あの交番の前だったのでした。

通り魔・幽霊・交通事故

あなたはこの恐怖をどう感じますか?
                                    おしまい

──おはなし──

ここでは未発表の作品を紹介しています。
小さな小さなお話です。

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